LSD90分の効果
思わず(な、なんじゃこりゃ~!!)って叫んだよね(心の中で)。
とある公園にあるゴム舗装がしてあるランニングコース、1周600mという短さ故か走る人はほとんど居らず、犬の散歩やウォーキングのご夫婦のいる中を、足音高らかに(静かに走るフォームが身についていない)女が走ります。20時40分頃スタートです。
(なんでこんな時間にこんなとこ走ってるんだよ)という視線を感じていたけれど、(公道を90分走る膝がまだ無いから仕方ないんだもん! 隅っこ走るし追い越す時は距離取るからあんまり見ないでクレヨン…)と思いながら、キロ7分半程ののんびりペースで走り始めます。
相変わらず左膝の微妙な痛みと、昨日の帰宅ランで張ったふくらはぎに違和感がありますが、さすがゴム舗装のコース、公道を走る程のダメージはありません。
これなら何とか走りきれるかなと思いながら、空を見上げると半分の月が美しく光っています。
(夜ランはお月様見られるからいいなぁ、遠くに見える街の明かりも綺麗だなぁ)なんて思いながら足を進めます。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐる回ります。
600mをぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐる何度もぐるぐる回ります。
……。
………。
…………。
(…飽きた、もう飽きた!!)と堪忍袋の緒も切れる寸前で周回コースを20周12キロを90分で走り切り、ウォーキングに切り替えた瞬間にそれは起こりました。
(な、なんじゃこりゃ~!! ふくらはぎとほっぺたがじんじんしてるー!!)
今までにない感覚が私を襲います。
痛みも熱もなくじんじんとした不思議な感じがあるのです。
痙攣してるわけではありません、脈打つ感じでもありません。ただふくらはぎとほっぺたの奥深くで、何かじんじんとした感覚があるのです。
(もしかして、これがLSDで今まであんまり使ってなかった毛細血管に血が巡った感覚なのかしら…!)
走り慣れた人には当たり前の感覚なのかもしれません。しかし初めてノンストップで90分走った私には、驚きの感覚です。
(なんか不思議な感じ! なんか面白い感じ! こそばゆい感じ! なんか凄い!)
クールダウンのウォーキング中もその感覚は消えることはありませんでした。
軽く汗を流し、膝をアイシングして冷やす頃、その感覚はゆっくりと消えていきました。残ったのは左膝の微妙な痛みだけ。
(この感覚、忘れないようにしたいなぁ。)
初めての感動が、後の行動を決定することがあることを、私は経験で知っています。
初めてのノンストップで90分走れたこと、その時に感じたふくらはぎとほっぺたの不思議なじんじんとした感覚。
そのことがいつか「走ることは楽しいこと」だと思う最初のきっかけになればいいなぁ。
そう思いながら、膝に湿布を貼っています。
私にはまだ走ることは楽しいことではありません。
まだ、ね。